日本経営倫理学会

設立経緯

本学会設立の経緯

バブル経済崩壊に伴う数多くの不祥事に際して我が国企業における 「経営倫理」 《ビジネス・エシックス》の必要性が強く叫ばれて以来、多くの企業や関係者間でそれへの関心が高まり、種々の本格的取り組みを開始する企業も現われています。新しい時代の潮流に沿って市民社会や国際社会から益々求められる「経営倫理」や企業の社会的責任は、21世紀に向けて、これからの企業においてその重要性を一層増すものと思われます。

 この様な新しい流れに対応して、私どもは1991年、産学両界の有志が集い「経営倫理を考える会」を発足させ、企業の内外にわたって関連するビジネス・エシックスの諸問題の検討と研究を精力的に進めて参りました。その勉強のなかでビジネス・エシックスに関する産・学の取り組みの日米比較を通じて我が国におけるこの分野の専門的研究の著しい遅れと、これの改善こそ我が国の産・学にとって急務であることを痛感しました。

 アメリカの産業社会では1970年代からビジネス・エシックスが企業経営における1つの大きな必須条件として位置づけられています。また、主要なビジネススクールでも数年前からビジネス・エシックス(経営倫理論)が必須科目となって正規の学習カリキュラムに登場しています。さらに、専門学会も全米で既に3つも存在し、夫々多数の会員を擁して企業における個人の倫理はもとより組織・システムの倫理問題の考究など、積極的な活動を展開しています。

 私どもはこのような我が国の遅れを憂慮し、1993年4月に我が国で初めてのビジネス・エシックスに関する専門的研究のための「日本経営倫理学会」を設立致しました。

 なお、この学会は研究対象や範囲が企業経営のあり方や根幹に関わるとともに企業内外の広範・多岐な分野にわたりますことに加え、経営学はもとより、法学・経済学・社会学・倫理学など多種分野の専門研究者や実務家などによる学術的・システム的な観点からのアプローチも必要であるため、企業人・学者を問わず、関心がある多くの人々に対していわゆる"開かれた学会"を目指して参りたく存じています。

 云うまでもなく「ビジネス・エシックス」に関しての我が国初の学会ですから、今後は特段のPR活動が必要と存じますが、産・学両界の有識者の参加を得た活発な活動を通じて"小さく生んで大きく育てる"われわれの方針を実現していきたいと思います。たとえば学生が企業人となる以前に大学の正教科目として「経営倫理学」を学ぶことができるように、また、企業における経営・管理者教育の中にビジネス・エシックスのコースが必ず包含されるよう推進するのも具体的な活動の一環と云えましょう。

 新しいこの学会が単なる研究学徒による内向きの勉強集団でなく、21世紀の新しい時代に適したビジネス現場の構築に役立ち、企業経営においても人間性と社会性が実現されるような社会の実現に寄与し得ることを心から念願している次第です。

 「日本経営倫理学会」 本学会創立者・前名誉会長 水 谷 雅 一 (1928-2009)