この度、2025~26年度の学会長に選出されました髙野一彦です。多くのみなさまにご支持を頂き、学会長に就任致しましたことを大変光栄に思いますし、心より御礼を申し上げます。
日本経営倫理学会は、本年度で創立33周年を迎え、会員数は540名前後の、社会科学系の学会としては中・大規模の学会となりました。本学会のこのような発展には理由があります。
第一は、法の要請です。わが国では2003年から2006年にかけて、企業に対して事件・不祥事を事前に予防する体制の整備を求める法律が相次いで成立しました。それは、2003年成立の個人情報保護法における安全管理措置義務、2005年成立の会社法における内部統制システム構築義務、そして2006年成立の金融商品取引法における内部統制報告制度などであり、主に大企業・上場企業の経営者に対して、コンプライアンス体制・リスクマネジメント体制の構築と運用を促すモチベーションになりました。
第二は、機関投資家の動向です。機関投資家によるサステナブル・ESG投資残高が、2024年3月末時点で約625兆6千億円、総運用資産残高に占める割合は63.5%に達し、直近10年で約744倍に急拡大しています。その結果、上場企業の経営者の企業倫理、CSR、コンプライアンス・リスクマネジメントへの関心が以前に増して高くなっています。
このような背景があり、「企業」を共通テーマとして、企業倫理学、CSR、コンプライアンス・リスクマネジメントなどの各分野をリードする研究者が集まり、研究・教育・社会的活動を行っている本学会は、現代社会から求められて発展してきた観があります。今後、産業界における本学会への期待は益々高まっていくことでしょう。
したがって、その期待に応え、学会として更なる発展を遂げるために、本学会の2025~26年度の重点的運営方針を次の5点としたいと思います。
(1)研究活動
本学会は、異分野の研究者、実務家と研究者が互いに尊重し合って研究活動を行っており、学際研究を行う理想的な学会組織だと思われます。現在の本学会のこのような組織風土は、歴代会長のもとで多くの先生方が創りあげてきた財産です。今後もこの組織風土を変えることなく、学際研究、学の実化(研究成果を実社会に生かす)を推進します。
(2)産業界との関係
本学会は、「企業」を共通テーマとして研究活動を行っています。したがって、企業との関わりの中から実効性のある知見が生まれます。本学会は、多くの企業に法人会員として参加して頂き、共同研究などを誘致し、また研究者を目指す企業の実務家がさらに活躍できる学会になるように尽力いたします。特に本学会の姉妹研究機関である経営倫理実践研究センター(BERC)との良好な関係を構築をし、産業界との関係を深めていきます。
(3)国際関係
国際学会や国際ジャーナルとの関係を構築し、学会員の発表や投稿の機会を増やすことで、若手研究者にとって魅力的な学会になるように尽力いたします。
(4)若手研究者の育成、学生の経営倫理学への関心の喚起
本学会は、「研究法ワークショップ」で若手研究者の育成支援を、また「CSR構想インターゼミナール」で大学生の「経営倫理学」への関心を高める活動を行ってきました。今後もこれらの活動を推進し、次世代をになう研究者の支援、学生の経営倫理学への関心の喚起を行います。
(5)学会の安定的運営
学会の安定的、持続的な運営のためには、総務・広報の機能が重要です。総務・広報の機能を確立し、各委員会や研究部会が自律的に活動できる「基盤」の整備を進めます。
これらの取組みにより、本学会に所属する先生方の研究のさらなる発展と高度化に少しでも貢献できましたら本望です。
2025年9月15日
日本経営倫理学会 会長 髙野一彦
(関西大学 社会安全学部長・大学院社会安全研究科長 教授・博士(法学))