2023年9月21日、本学会で理事、論文審査委員などを務められた上原利夫様が88歳で逝去されました。ここに謹んでお悔やみを申し上げますとともに、生前の本学会へのご貢献を心より感謝して、お別れの言葉を掲載いたします。
・・・・・・・・・・・・・
上原利夫さんがやすらかに永眠されました。論文審査に当たっては形式よりも内容を重視され、特に新規性がないとまず通りませんでした。ガバナンス研究部会が監査研究部会といわれた時代から長年活躍され、特に日本商法の源流であるドイツ商法典に関し、ドイツ人ロェスレルの研究で博士号(一橋大学)を取得され何度か研究部会で発表されました。晩年は一般社団法人DIRECTFORCEの企業ガバナンス部会のメンターとして助言・教育に精力を傾けられました。
上原先生は外資系ハゲタカファンドが大嫌いで、当学会に寄付金を贈呈されたファンドを勘違いされて「お前、ファンドごときから貰うとはどういうことか!」と一喝され、「いやいやここは初代金融庁長官らがいる日本の再建ファンドです。社会貢献として一橋大学にも大金を寄付しております」と説明しましたら「分かった。それなら許す!」と言われたのが昨日のように思い出されます。奥様の話では告別式の最後でトランペットを吹奏して見送りされたとのこと。上原先生らしいなと思います。ご冥福をお祈りいたします。
(常任理事 今井祐)
上原さんは、本学会の元理事であり、学会誌編集委員も務められた。学会誌には11回も共著を含めて投稿された。住友商事を退社後に監査役の立場・視点から研究を深めて来られたようで、企業行動研究部会や企業監査研究センターに所属された。一橋大学大学院法科研究科の博士号も取得された本格的な研究者だった。一橋大学の同窓組織である如水会・監査役懇話会(ミミの会)の世話役で、私はその懇話会で2016年、「中嶋久萬吉と渋沢栄―:如水会・母校への貢献、財界世話業の継承」について報告させてもらったことが大きな思い出である。
それ以前に由井常彦先生と共同でその懇話会で発表したことがあった。そして私の博士号が終わった記念に再度、詳細に報告することができた。本学会で由井先生のご講演が2008年頃にあり、商社の歴史についての話で盛り上がった。ご本人も住友商事の社史について証言を残したかったとの希望だった。商社史の専門家に繋げようと思っていたが、それが果たせず残念なことになった。『住友本社経営史 上・下』の大著を残した山本一雄さん(故人)は同じ住友商事の出身で、経営史学会や企業家フォーラムでたまたま面識を得たが、上原さんの同僚である。住友商事からは西藤輝さん、瀬名敏夫さんも本学会の理事として入られた。
実は私は大学院に進む前の1988年頃に、住友系の会社に内定をもらったこともあり、何かのご縁があったのかもしれない。ご本人が残された論文からは、総合監査の意義など改めて学び直したいと思う。学術的なご貢献を想い、ご冥福をお祈りします。
(常任理事 村山元理)