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日本経営倫理学会

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2013年度活動報告

日本経営倫理学会20周年を記念し国際シンポジウムの開催を計画してきた。国際部会の年度予算は15万円程度であり、単独で学者を招聘しての開催は難しいことから、何度となく計画は延期されてきた。今年度は念願であった、海外からの学者を招聘しての講演会を開催できたことをまず喜びたいと思う。

この講演会はカリフォルニア大学バークレー校のDavid Vogel教授を御迎えして、11月16日(土)慶應義塾大学三田キャンパスで開催された。Vogel 教授はGlobal Corporate Responsibility and Business Ethics と題して1時間ほどの講演をされ、通訳は梅津光弘副会長が担当した。ここ数十年における米国やその他の世界における企業倫理学やCSRの興隆を、企業に対する社会の批判的視点の興隆の観点から分析され、この運動が欧米においても日本においてもそれなりのレベルに達していることを指摘された。また、今後は環境問題との関わりから、各国における政府と企業の連携の重要性や世界的な業界団体やNGOなどが提供している産業綱領の進展や国連グローバルコンパクト、さらにはSRI(社会的責任投資)の状況なども説明された。

つづいて日本企業におけるCSRの強みと弱みに言及され、日本企業の実践や国際的な貢献を評価すると同時に、世界的にはそうした努力はあまり認知されておらず、市民団体やNGOの活動も弱い為に民主的な改善圧力は弱いとの指摘がなされた。

慶應義塾大学での記念講演会には、約120名の学者、学生、企業関係者などが参集し、講演後約1時間に及ぶ活溌な質疑応答が行われたほか、その後の懇親会においても50名の参加がVogel教授を囲んで有意義な交流が行われた。Vogel 教授はThe Market for Virtue: The Potential and Limits of Corporate Social Responsibility. (Brookings Institution Press, 2005)の著者として有名であり、日本でも本書の邦訳が出版されている。本書は近年のCSRへの関心の高まりを、様々な統計を用いて客観的に評価しようとしているところに特徴があり、CSR礼賛一辺倒の講演ではなく日本の取組みへの批判も含めた御講演をいただけたことは学会としての20周年にふさわしい講演会であった。その後Vogel先生は国際文化会館、一橋大学でも講演をされた。

今回は招聘から滞在まで日本経営倫理学会が主催する初の招聘講演会であった。キッコーマン株式会社、および経済学会連合からの財政的支援をいただいたために、国際部会からの出費はほとんどなく済ませる事ができた。今後も時宜を得た招聘講演会を開催していくことは、様々な困難もあって毎年開催などは不可能としても、全体として大きな意義のあることであり今後とも学会の取り組むべき課題の一つであると思われる。

昨年も海外での学会等での会員の発表が行われた。まづ8月にフロリダのウォルトディズニーリゾートで開催されたSBEアニュアルミーティングへのJABESからの発表者は梅田 徹先生(麗澤大学)、出見世信之先生(明治大学)、古山英二先生(元日本橋学館大学)の3名であった。当学会からは例年の通り姉妹学術団体として歓迎会に対する返礼としてSBE6名の方へ扇子をお渡しした。

9月25〜26日には国連PRME世界大会がスロベニアのBledで開催され、梅津光弘先生(慶應義塾大学)が参加した。この会にはヨーロッパを中心に全世界から300名を超す企業倫理、CSR研究者が集まり、責任経営教育の現状について活溌な発表と議論がおこなわれた。