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日本経営倫理学会

役員コラム「経営倫理の窓から」

もう一つの活動領域、世界の飢餓を考える(常任理事 事務局長 河口洋徳)

 かれこれ20年近くになるが、個人としてあるボランティアを続けてきた。「国連世界食糧計画WFP協会」での活動である。世界には20年前も今も飢餓が蔓延している。一体何をやって来たのだろうと少々情けなくもある。
 2005年当時それまで全くと言ってよいほど認識の無かった世界の飢餓問題を知り、驚愕したことが鮮明によみがえる。当時の世界人口は約65.6億人でその年の飢餓人口は約7.9億人、人口比では約12%の人々が餓えに苦しんでいるという実態を目の当たりにしたからであった。世界の人々の10人に一人以上が飢餓に直面しているという現実はあまりにも衝撃的であった。
 当時は企業人であったが、こうした現状を何とかすべきと考え、会社でのCSR推進活動の一環として前出のWFP協会への支援を実施することとした。今で言うならサステナビリティー活動の一環であろうか。
 具体的には協会との相談で、先ず企業として同協会の評議員としての登録を行い、社員への呼びかけで「ウオークザワールド」というウオーキングイベントに参加するなどの活動に取り組んだ。さらに個人としても何かすべきと考え、協会ボランティアとして登録した。当時UNICEFと言えば多くの人が認識していたものだが、WFPと言ってもそれほど知られてはいなかった。
 もちろん、個人の力とりわけいわゆるサラリーマンなる存在にとって、それはちっぽけな活動であることは十分に認識している。社内の活動を通して、また休日にはボランティアメンバーと開く勉強会や街頭での募金活動などの地道な取り組みにより、先ず世界の飢餓についてその現実を知ってもらうこと、さらには学校給食支援などの募金に協力してもらうことから始めた。
 10年後の2015年には世界人口74.4億人のうち飢餓人口は7.95億人、約10.7%となり、少しずつ改善の兆しが見えた気がしたものである。
 その後の10年を見ると、一時期はかなり改善傾向にあったが、2023年でも9%、世界の11人に一人が飢餓に苦しんでいる。2024年の最新数値はこの夏には発表されるものと思われるが、世情を見るにつけ更に厳しい現実がある。コロナという難敵に見舞われた後も、自然災害の増加や国家レベルの紛争の拡大にさらされている。
 2023年に必要とされた飢餓への資金は228億米ドル、それに対しWFPが調達出来た額は83億米ドルにとどまる。2025年は更に厳しい現実が待っているのではないか。
 今回は已むに已まれず、この現実を訴えさせていただいた。
 2025年3月15日
(国連WFP協会 EV兼横浜支部副代表)

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