2015年9月、ニューヨークの国連本部において「国連持続可能な開発サミット」が開催され、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。この目標が17のゴールと169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」である。
日本でも、大企業を中心として多くの企業が自社のホームページに「サステナビリティ」等のトピックを設け、SDGsへの取り組みを情報発信している。また、テレビ番組ではSDGsに関する特集が組まれたり、InstagramやXをはじめとするSNS(Social Networking Service)においてSDGsに関するアカウントが作成され、様々な情報が発信されたりと、"SDGs"という用語はいまや広く社会に浸透している。
周知の通り、SDGsは2030年までに達成すべき貧困、飢餓、教育、気候変動、そして生物多様性など、環境や開発に関するグローバル規模で取り組むべき目標であり、本コラムを執筆している2024年以降は、SDGsにとって非常に重要な時期となるであろう。これまでは、企業あるいは各組織がSDGsの達成に向けて「どのような取り組みをしているのか」、また、テレビやSNSを通じて「SDGsとはどのようなものなのか」を発信することが主であった。こうした情報発信がSDGsの認知度を高め、社会に広く浸透したことに寄与したことは言うまでもない。しかしながら、これから2030年に向けては、「どのような取り組みをしているか」だけでなく、SDGsの達成に向けた取り組みが「どのような成果を残したのか」が重要となってくる。
現在掲げられている社会的課題を2030年までに完全に解決することは非常に難しい。また、どのような状態になれば解決したと判断することができるのかも明確にすることができない。しかし、SDGsへの取り組みの成果を多くの個人・組織が実感できれば、2030年以降の社会に大きな財産を残すことに繋がる。SDGsを一時の流行に終わらせてしまうのではなく、長期的な積み重ねによって社会的課題を解決するための活動へと昇華させるためにも、今一度、企業などの組織単位ではなく、一人ひとりの個人単位で社会的課題について考えることが求められるであろう。
(日本大学法学部 准教授)
2024年6月13日