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日本経営倫理学会

役員コラム「経営倫理の窓から」

大学における「企業と社会」教育の現場から (会長 髙野一彦)

 筆者が教鞭を執っている関西大学 社会安全学部では、学部生を対象に寄附講座「企業の社会的責任」を開講している。この寄附講座は、日本経営倫理学会の姉妹研究機関である一般社団法人 経営倫理実践研究センター(Business Ethics Research Center:BERC)が会員企業178社の中から登壇を希望する企業を募り、毎年十数社の方に関西大学にご来校頂き、自社グループのCSR経営やコンプライアンス、経営倫理の浸透活動などについて講演をして頂いている。学生たちは親しみを込めて「BERC寄附講座」と読んでいる。
 このBERC寄附講座は筆者が担当しているが、2013年に開講し、コロナ禍で企業が出張を制限した2021~2年の2年間を除き、継続して開講してきた。本年度は、パナソニックホールディングス、日本たばこ産業(JT)、JR西日本、ダイセル、NEXCO西日本、アデランス、アコムなど、各業界でCSR・コンプライアンス・経営倫理に積極的に取組んでいる企業10社の方にご登壇頂いた。
 BERC寄附講座は学生に大変人気があり、毎年200~250人が受講している。講義中、学生たちは真剣な眼差しで講義を聴いており、質疑応答では多くの学生が挙手をして質問し、講義が終了した後も登壇者の周りに学生たちが集まって質問をしている。学生たちが企業の仕事、特にCSR・コンプライアンス・経営倫理に関する業務に強い興味を持って参加していることがよくわかる。
 関西大学 社会安全学部は、企業の事件や事故などの社会災害、地震などの自然災害や感染症パンデミックについて、安全・安心で持続可能な社会の構築を目的に、損害の最小化と社会的な価値創造を目指して研究・教育を行っている。学部教育では、企業や行政においてこれらの業務を担う人財の輩出を目指しており、仕事内容を知り興味を持ってもらうことは重要である。同時に、企業で働いている方は、仕事を通じて社会に貢献しようと真摯に尽力しておられることを知ってもらう良い機会でもある。
 関西大学 社会安全学部の卒業生の中には、大学院に進学して日本経営倫理学会の会員にった人がいる。また、企業に就職してCSR構想インターゼミナールの支援を行っている人もいる。
 筆者は、日本経営倫理学会の会長を拝命し、学会運営の重点施策のひとつとして「若手研究者の育成、学生の経営倫理学への関心の喚起」を掲げたが、若い人が関心を寄せる学問分野は発展すると言われており、重要な施策だと考えている。

 2025年10月9日
 関西大学 社会安全学部長・大学院社会安全研究科長 教授・博士(法学) 

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役員コラム「経営倫理の窓から」